ロータリー年度では昨年度の事業になりますが、2023年2月15日から21日の日程で実施されました「ラオス住血吸虫症根絶及び教育支援事業」についてご報告させていただきます。
「ラオス住血吸虫症」はメコン川流域の約200ヶ村にのみ蔓延する、巻き貝の幼体を感染媒体とし、感染者の糞便や傷ついた皮膚を通して感染が拡大する『顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases=NTDs)』の一つで放っておくと死に至ることもある病気です。なぜ『顧みられない』という名前がついているかということですが、先進諸国の栄養状態の良い人間が観光で訪れたぐらいではかかる病気ではなく、長期に渡って栄養状態の良くない不衛生な環境にさらされ続けることによってのみ感染する病気なので、先進諸国の人々には縁遠くて従って支援を得にくいということが『顧みられない熱帯病』と呼ばれている所以です。
本事業は2017-18年度に奈良東RCと平城京RCがはじめられた事業で、桜井RCは2018-19年度から参加させていただいております。2018-19年度は、奈良東RC、平城京RC、桜井RCのそれぞれのクラブが地区補助金を申請し、総額約300万円の事業でした。当該年度は北口会長、植村会長エレクト、中田会計、幹事内田(役職名はいずれも当年度のもの)の4名が現地での事業実施に当たりました。福井県、滋賀県からの参加者もあり、事業規模もその年度が最大でした。WHOの技官の矢島先生や現地の保健省の担当官も出席しての夕食会を兼ねての打ち合わせ会もあり、本事業に最初から、そして今も関わりを持ち続けてくれている和歌山県のロータリークラブの元米山奨学生で社会主義国のラオスで唯一のロータリークラブを創設したビエンチャンロータリークラブのトォさんに、桜井ロータリークラブのポロシャツをバナー代わりに差し上げました。国際奉仕事業で大切なことは、被支援国側に彼のような信頼の置けるパートナーがいてくれることです。
コロナ禍で中断後2021-22年度には教育支援物資を送付するのみの事業(桜井RCは送料を支援)でしたが、ZOOMで現地と繋いで子どもたちの笑顔を見せてもらいました。今回は奈良東RCから10名、平城京RCから会長ご夫妻含む3名、桜井RCからは西峯PP、中田PP、内田の3名の計16名の団員で訪問しました。今回もZOOMで現地の様子を日本にいる各クラブの会員を奈良東RCの例会場のJWマリオットでご覧いただきました。
今回の事業規模は奈良東RCさんの地区補助金事業を使っての約100万円+平城京RC、桜井RCから各5万円でした。現地到着の翌日2校、翌々日に4校を訪問し、次の日には帰路につくというハードスケジュールでしたが、今回も子どもたちの笑顔から元気をもらって帰ってきました。現地では、プラジカンテルという大きくて飲みにくい駆虫薬服用してもらうお手伝い、紙芝居による啓発活動、文具やお菓子の配布を行います。
さて、ここからは私が地区国際奉仕委員長であることもあり、今年度中に是非ともグローバル補助金の申請をしたいと考えている、インドネシアのスラウェシ島における「日本住血吸虫症」の根絶に向けた事業のお話をさせていただきます。先程もお話させていただきましたが、地区の国際奉仕委員会はWHOの矢島先生に活動のご提案やご指導をいただいております。「日本住血吸虫症」は矢島先生のご専門である『顧みられない熱帯病』の一つで根絶に一番近いと考えられている病気です。なぜインドネシアなのに「日本住血吸虫症」なのかということですが、感染媒体の貝が日本で発見された病原体と同じであるということからだそうです。今もアフリカやアジアなどにある住血吸虫症ですが、世界で唯一、日本だけが根絶に成功しており、1996年に世界で初の終息宣言が出されました。当時の日本では、子どもたちが総出で水耕田や用水路の貝を引き上げて焼却するなど、人海戦術で根絶に至ったそうです。インドネシアでも水耕田があり、「人」とともに田を耕す「水牛」も宿主となっている特徴があります。グローバル補助金でトラクターをと考えたのですが、矢島先生によりますと、一度壊れてしまうと修理の技術がなく、スクラップになってしまうとのことでした。そこで地道な啓発活動や他の環境には影響の少ない殺貝剤の散布、用水路の整備などが有効な手段であるとのことです。
グローバル補助金の申請には現地のパートナークラブが必須条件となっていますが、今のところ平井直前会長が天理大学のインドネシア語学科の卒業生の方々に呼びかけていただいたり、私も現地のガバナーのSNSに直接繋いでみたりしていますが、なかなか苦戦しております。今後もグローバル補助金獲得に向けて努力してまいりますので、会員の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。